2013年5月12日日曜日

スワンソング

終始重い空気いっぱいの作品。
しかし、ただ暗くネガティブな作品というだけでなく、登場人物たちの行動や思いが「境界性パーソナリティ」の典型的なタイプで、とても興味深く読んでいられました。
頭の中では思い当たるフシがあったりで苦くも甘酸っぱくもあり、それでも幸せにも感じた。
ただ、その幸せなイメージ(妄想?)を持ちながらも最後に向かって読み進めていったのですが、淡い期待も虚しく見事に裏切られ、辛く、切なく、涙が…。結局号泣。

大崎善生さんの作品は「パイロットフィッシュ」「アジアンタムブルー」と読んできましたが、一貫して心に響いてくるのは過去への向き合い方。
過去の自分が今の自分を作っていて、変えることの出来ない過去に人間は影響を受け続けるのだ。しかしそこに後悔や悲観的なメッセージはなく、それを反省して生かして苦しみながら今を作り上げていく人が美しい人である。というメッセージ。
「パイロットフィッシュ」で受けたインパクトが先入観を生んでいるのかもしれないが、そんなメッセージを感じながら読んでいました。

最後のパートの手前まで「辛い思いをして読んだ時間を返してくれ!」と言いたくなる重さだったけど、そうではなかった。
それとはまた違う重さと美しさがあった。

スワンソング (角川文庫 お 49-6)スワンソング (角川文庫 お 49-6)
(2010/06/25)
大崎 善生

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