ラベル 大崎善生 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 大崎善生 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2013年5月12日日曜日

スワンソング

終始重い空気いっぱいの作品。
しかし、ただ暗くネガティブな作品というだけでなく、登場人物たちの行動や思いが「境界性パーソナリティ」の典型的なタイプで、とても興味深く読んでいられました。
頭の中では思い当たるフシがあったりで苦くも甘酸っぱくもあり、それでも幸せにも感じた。
ただ、その幸せなイメージ(妄想?)を持ちながらも最後に向かって読み進めていったのですが、淡い期待も虚しく見事に裏切られ、辛く、切なく、涙が…。結局号泣。

大崎善生さんの作品は「パイロットフィッシュ」「アジアンタムブルー」と読んできましたが、一貫して心に響いてくるのは過去への向き合い方。
過去の自分が今の自分を作っていて、変えることの出来ない過去に人間は影響を受け続けるのだ。しかしそこに後悔や悲観的なメッセージはなく、それを反省して生かして苦しみながら今を作り上げていく人が美しい人である。というメッセージ。
「パイロットフィッシュ」で受けたインパクトが先入観を生んでいるのかもしれないが、そんなメッセージを感じながら読んでいました。

最後のパートの手前まで「辛い思いをして読んだ時間を返してくれ!」と言いたくなる重さだったけど、そうではなかった。
それとはまた違う重さと美しさがあった。

スワンソング (角川文庫 お 49-6)スワンソング (角川文庫 お 49-6)
(2010/06/25)
大崎 善生

商品詳細を見る

2012年10月29日月曜日

アジアンタムブルー

二人の間に存在する隙間。
それがあるからこそ、僕たちはそのことに思いを馳せるのではないだろうか。

君が幸せだと言う。だから僕も幸せだ。

前作「パイロットフィッシュ」につづく恋愛小説。
切なくも、強く優しく幸せな気持ちになれた。

アジアンタムブルー (角川文庫)アジアンタムブルー (角川文庫)
(2005/06/25)
大崎 善生

商品詳細を見る

2012年10月23日火曜日

パイロットフィッシュ

「人は、一度巡りあった人と二度と別れることはできない。」
こんな言葉から始まるこの作品には、とても共感でき、切なく優しい気持ちにさせる言葉がたくさん詰っている。

「こうやって無防備に時間は流れていく。幸せなときもそうでないときも、あまりにも無防備に。そして流れてしまった時間は、突然に音をなくしたこの水槽のように心のなかの奥深くに積み重なって、どうしようもないくらいに積み重なって、やがて手に取ることもできなくなってしまうのだ。」

「君がたとえ僕の前からいなくなったとしても二人で過ごしていた日々の記憶は残る。その記憶が僕の中にある限り、僕はその記憶の君から影響を与え続けられることになる。(中略)これまでに出会ってきた多くの人たちから影響を受け続け、そしてそんな人たちと過ごした時間の記憶の集合体のようになって今の僕があるのかもしれないと考えることがある。」

心の奥深くには湖のような場所があって、そこにはとりあえず必要がなくなって放り込まれていった時間の記憶が沈んでいる。だけど何かの拍子にそれは浮かび上がってくる。
それに手を伸ばしても、沈殿している過去を二度と手に取ることはできない。しかしそれは自分の中に確かに存在している。

自分という過去の記憶の集合体に、この先どう向き合って生きていくべきか。
すこしヒントがもらえた気分です。

パイロットフィッシュ (角川文庫)パイロットフィッシュ (角川文庫)
(2004/03/25)
大崎 善生

商品詳細を見る