2014年3月12日水曜日

遠くでずっとそばにいる

交通事故で10年分の記憶を失った主人公の、苦しみと切なさを描いた恋愛ミステリー。

ミステリーとしては、途中でオチの予想が出来てしまい、ちょっと物足りない。
恋愛物としては、17歳の主人公と27歳の主人公の生き方や好みの違いが、何故何処で生まれたのかという原因が描かれていない為、ちょっと腑に落ちない。
読みやすく、あっという間に読み終わったけど、何か心に残るものが少なかった。

ただ、10年分の記憶を失くし、10年後にタイムスリップしてしまったかのような主人公の心情は上手く表現されていると思った。
自分を自分と認められない違和感に囚われ、自分と自分の愛を探す過程で湧き上がる自分への嫌悪。
自分に置き換えて考えてみても、きっと10年前の自分は今の自分に違和感と嫌悪感を持つのだろう。
自分を生きていながら、一方で客観視している。
それを自分で意図して出来ているのであれば良い事なんだろうけど、この主人公は自分の意図に反して客観視させられている。強制的に自分探しをさせられている。
そこに絡んでくる10年間の人間関係が絶妙で面白い。
10年ってあっという間のようで、振り返ると長いようで…。
追体験すると面白いけど、生き方の違いを生んだ原因の描写が弱くて…と言っても、人が人を好きになる原因・理由とかを問うのって野暮っちゃ野暮なんだけど(笑)
モヤモヤと考えさせられる作品でした。

遠くでずっとそばにいる (幻冬舎文庫)遠くでずっとそばにいる (幻冬舎文庫)
(2012/04/12)
狗飼 恭子

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